先日対戦した『ハンニバル』のリプレイです。
この記事を書くにあたって、多少・・・。いや、かなりの躊躇がありました。
何故なら、読み進めていただくと分かるのですが、相当有利な状況から逆転負けを喰らっているのです。ええ、「しばらく『ハンニバル』はいいや」って思うくらいに。
しかし、他人様から見たら大変面白いのではなかろう、と気合いを注入しました。このリプレイは面白いですよ。
まずは、傑作『ハンニバル』の紹介から致しましょう。
歴史的な背景は、塩野七生の『ハンニバル戦記 ローマ人の物語II』を読むのが一番いいですね。燃えまっせ。
詳しくはそちらへ譲りここでは簡単に。
ローマ帝国というのは誰しも聞いたことがありますね。「全ての道はローマに通じる」の格言とか、ジュリアス・シーザーとかクレオパトラとか有名人の盛り沢山なお国でした。
この『ハンニバル』は、そのローマが大国として勃興する最初の試練である、第2次ポエニ戦争を扱っています。
当時のローマは共和制でした。これは王様の独裁で痛い目にあって、それを防ぐためのシステムでした。
奴隷はいましたが、ローマ市民には平等な権利が与えられており、徴兵?志願?。どちらか覚えていませんが、常備兵を備えています。これ重要。
この優れたシステムにより、強固な軍事組織を持つローマは、地中海を中心に領土を広げて行くこととなります。
その緒戦となるのが、カルタゴを相手にした3次に亘るポエニ戦争です。
当時のカルタゴは第1次ポエニ戦争で敗れた事により、シチリアを失っています。この戦いは主に海戦で、それまで強力な海軍で地中海を制圧していたカルタゴは、その海軍を失った事により、ローマに制海権を譲ってしまいました。
これは当時の流通を考えると、大きな痛手と言えます。地上より海上を動いた方が効率は良かったのです。
その敗戦で20年の歳月をかけて復讐の時を待っていたのが、このゲームの題名であるハンニバル。
彼はローマと融合的なカルタゴ本国を離れ、当時カルタゴの植民地であったスペインで力を蓄えます。そして兵力を整え、さらに象まで引きつれてローマへと侵攻したのです。
ゲームはハンニバルがスペインを出発する時点から始まります。
勝利条件はイタリア、スペイン、カルタゴ、それにシチリアとコルシカの各地域を、最終ターンにどれだけ占領しているか。
同じならカルタゴ=ハンニバルの勝利となります。
これはハンニバルの目指していたことです。彼はイタリアへ侵攻し、当時ローマと同盟を結んでいただけの各地域を、ローマから離反させることを狙っていました。この勝利条件は絶妙です。
いや、『ハンニバル』をデザインしたマーク・シモニッチが作るゲーム全般に言えることになりますが、全てが絶妙なのです。勝利条件にしろ、ゲーム展開にしろ、ルールの分量からその内容まで。『ハンニバル』のリプレイから逸れますので、この辺にしておきますが、彼が完成させたウォーゲームの全ては高い完成度を誇っています。
『ゲーム開始時点』ゲーム開始時点さあ、リプレイへと移りましょう。
この対戦はF谷さんとの通信対戦(VASSAL)でログを保存し、そこから作製したものです。ですから、完全に対戦の記録をされているのです。
陣営は私がカルタゴ、F谷さんがローマを担当しました。
私はこの対戦直前に、このゲームの作戦研究を一段落させており、その実践と試行を兼ねてでした。まあ、多分に「オレって今強いぜ」という気分満々でしたがw。
ゲーム開始時点の状況を説明しておきましょう。
カルタゴのCU(戦闘ユニット)は白で、PC(支配マーカー)は青です。ローマのCUはベージュで、PCは赤になります。
カルタゴのハンノ 東西Numidiaカルタゴの勢力範囲は青の円内です。アフリカの今のチュニジアがカルタゴ本国です。そこにはハンニバルの行動に懐疑的なハンノがいます。アフリカには4つの地域があり、東西のNumidiaは騎兵の一大生産拠点です。
スペインの前哨地帯であるIdubedaは、まだどこの支配ではありません。
しかし他の3ヵ所はカルタゴの支配となっています。このゲームの主人公であるハンニバルは、スペインを出撃する準備を今か今かと待ちかねています。
イタリアの場合対するローマです。すでにイタリアとシチリアはローマの強固な同盟になっています。その例外がGalia Cisalpinaで、カルタゴの同盟部族が拠点を築いています。そうそう、孤立していますがイタリア南部のLucaniaにもカルタゴ陣営の部族があります。それと制海権を持っているため、コルシカはローマの支配になります。
兵力はローマにPスキピオ、シチリアにロングスが駐屯しています。
このような状況でゲームは始まります。さあ1ターンの始まりです。
1ターンのカルタゴ手札手札はこちらになります。悪くはありません。ああ、ちなみにですね。VSSALはAH版になっています。新しいバレー版はもっと豪華になってます。好みの問題ではありますが。私はAH版が落ち着いているように思います。
カードの内容に戻ります。悪くはありませんが、素晴らしい訳ではありません。
いいところは「シチリア反乱」があること。これでシチリアのローマPCを無くすことができます。ローマの増援が2枚来ているものいいですね。ローマは毎ターンの始まりに5CUを受け取ることができます。それをイタリアへ集中できるのが大きいのです。
カルタゴはカルタゴ、スペイン、そしてどこかの将軍=多分にハンニバルへ1~2CUだけです。
さらにローマには豊富な増援カードがあり、兵力差が時間を追って開いて行くため、カルタゴは苦しくなって行くのです。これは史実でもそうでした。この辺りも絶妙な1つです。
カルタゴにローマの増援が来ているので、カルタゴには使えないものの、ローマの増強を間接的に遅らせることと同意語になります。
「カトーがローマに助言する」もいいですね。これはローマをアフリカへ進出させないため、ハンニバルは向後の憂い無くイタリアへ赴けるのです。しかし、序盤からローマにアフリカへちょっかい出させる余裕を、ハンニバルが与えるということは如何なモノなんですけどね。
前哨戦あら、画像がない。仕方ないので下の図を参照してくだされ。
まずは両陣営とも空白地帯の支配=PCの配置から行いました。
カルタゴは「ローマの増援」でインドゥベダとガリア・キサルピナの最南部へとPCを置きました。対するローマはマッシリア周囲へとPCを配置。
カルタゴはハンニバルの進出を想定してガリア・キサルピナの最南部・ムルティナ。そしてローマの浸透を防ぐようにインドゥベダのデトッサとイイエーダ、そして支配を確立するためのイベルスとアザッリアと続けて置いた。
ローマのマッシリア周囲は会戦で敗れた影響を、この地域で消化するため。しかし初手でタラッコから海岸沿いに置いたのは、インドゥベダへの浸透を狙ってだ。カードは「ヌミディアの増援」と「ハンニバルがイタリアを虜にする」だった。「ヌミディアの増援」はこの時期には使えず、「ハンニバル~」はローマには使えない。要は、PCの配置には持って来いなカードを使ったのだ。
さあ、小手調べは終わった。ハンニバルの出陣だ。
ハンニバルの出陣OP(オペレーション=作戦)で1OPカードを使い、ハンニバルはアルプスの手前まで進出する。対するローマはマッシリア周囲へPCを置いて完全支配を確立する。
カルタゴのこのタイミングで「カトーがローマに助言する」で、アフリカの安全を得る。
ロングスの攻囲とシチリア反乱対するローマはシチリアのロングスを動員。カルタゴ部族の攻略を2手番使って攻囲を行う。ラスト2手番でカルタゴは「シチリア反乱」。これで部族の攻略を継続するか、シチリアの回復を行うかの選択を迫った。そう、主力のハンニバルへの圧力軽減を狙ったのだ。ローマの選択は攻囲の継続。そして部族の攻略を成功させる。
ハンニバルのアフリカ越えそしてハンニバルがイタリアへ侵入する。アルプス越えの損耗はさいの目が“5”で3CUを失う。全く、この前の対戦では“6”だったのによ。象隊も1つ失ってしまった。
これで1ターンは終了。
1ターンは終了時点地域の支配は、カルタゴ9に対し、ローマは7。そのため2PCをローマは失うのだが、定石通りにマッシリア周囲から取り除いた。まあ予定した行動だろう。
長くなりそうなので今日はここまで。
[3回]