さて、ASL分会で対戦した「冷たいワニ」A25『COLD CROCODILES』のリプレイです。
このシナリオは、ASLの中でも高い人気を誇っています。
部隊数はそれ程多くなく、マップも2枚とソコソコ。戦車が両陣営会せて10輌、そしてOBAまであります。展開も動きがあるため、プレイヤーの作戦立案から戦術までを、幅広く求められます。
千葉会のASL組では、幾度もプレイしており、私やルセロさん、そしてMMさんは10回以上の経験があり、ザハさんも5回ほど対戦の経験があります。
ですから、お馴染みと言ってもいいです。
では、シナリオの解説をしましょう。
1945年1月20日、オランダのST.JOOST村。
イギリス第8軽騎兵旅団とヒューブナー降下猟兵連隊の激戦を扱っています(再現とはいえませんね)。事前の偵察でST.JOOST村は2線級の国民擲弾兵が防備している筈でしたが、イギリス軍の攻撃を予期したフリードリッヒ・ヒューブナー(Friedrich Hubner)中佐により精鋭の降下猟兵連隊と入れ替えられていたのです。
この戦闘は有名らしく、「8th Hussars ST.Joost」で検索すれば、その詳細がアップされています。
攻撃側のイギリス軍は、1ターンに8個分隊(4-5-7×4、4-5-8×4)。指揮官が10-2、9-1、8-0の3名。支援火器(SW)がMMG、LMG×2、MTR×2、PIAT×2。戦車がクロムウェル×2、チャレンジャー×2。これが南端(マップで言えば下)から登場。そして4ターンに、9-1指揮官が4個分隊(4-5-7×4)とクロコダイル×2を率いて西端(マップでは左)から現れます。
防御側のドイツ軍は、9個分隊(5-4-8×9)。指揮官が9-2、8-1、8-0の3名。支援火器(SW)がHMG、MMG、LMG×3、88LLAT×2、?×10。4ターンに、Ⅳ号駆逐戦車×2が東端(マップでは右)から現れます。兵力的には1個中同士の戦いになりますね。
そして、部隊の内容を見ると、両軍の特徴を良く表しているのが分かります。
イギリス軍は人的資源の不足を戦車と支援火器で補い、ドイツ軍は少数ながら精鋭です。そして両軍に共通しているのは、バランスが取れていること。
指揮官も支援火器も程よい組み合わせです。これがソ連軍なら、指揮官や支援火器は少なく兵力が多く、日本軍なら・・・。足りないモノを「気合いで補う!」んでしょうね。
さて、SSR(シナリオ・スペシャル・ルール)では、運河は橋以外で渡れなく、橋は中央(A)しかありません。
建物は1階しかなく、ドイツ軍は1個分隊がHIP(初期隠匿配置)可能。そしてイギリス軍には80mmOBA(盤外砲撃)があります。
勝利条件を忘れてはいけない。
ゲーム終了時点でイギリス軍がドイツ軍よりVPを獲得していること。CVPは通常通りに計算し、石造建物は4VPとする。これが絶妙。
イギリス軍は攻撃を急ぐと、損害が嵩んでCVP(損害によるVP)を多くドイツ軍に渡してしまう。しかし、攻撃が遅れると石造建物の占領ができず、VPを獲得できない。これで作戦の幅が広がるんですね。
『配置から見えること』陣営は私が攻撃側のドイツ軍で、ルセロさんが防御側のドイツ軍でした。
イギリス軍は盤外から進入するため、ドイツ軍の全てに“?”が乗っています。それを数えると14個あります。ザハさんの配置では12個でした。
まず“?”マーカーが10個あるため、この中で5個はダミーです。次にザハさんとルセロさんのスタック数が違うのは、ルセロさんは指揮官を単独で配置しているため。
そしてルセロさんが狙ったドイツ軍の作戦を読んでみましょう。
スタックが全体的にあるのは、「後退戦術」を採っているから。自軍の損害を減らして、最終的に建物数で逃げ切るつもり。以前、ルセロさんとの会話で、その作戦の有効性を聞いていたので、そう読みました。
で、イギリス軍の採った作戦は「速攻」。
そのテクニックは戦車に乗せた歩兵を、砲塔を旋回させて振り落とす「緊急脱出」。一気に戦車の移動力で前進できるのです。NMCの必要があり、それに失敗するとSWも失ってしまいますが、モラルが8あればねぇ。
速攻でマップの中央へ進出し、ドイツ軍の行動を制限します。そして村には最優秀な10-2指揮官を突入させ、増援の小隊とともに押し切りを目指します。後は、野となれ山となれ。
『立ち塞がる88』・wani2さあ、ゲームが始まり、イギリス軍の戦車が突進します。
1輌目がsMを展開しつつ(後退戦術と見えて、罠を張られていたら困るので)、乗車中の歩兵を振り落とします。NMCの結果はPIN。何だ、前進できないな。
で、2輌目が運河に沿った道路を曲がると、その正面には88が・・・。
そう、ルセロさんは後退戦術とともに、ガチンコ勝負も挑んでいたのです。88を正面にしたイギリス歩兵も戦車兵も生きた心地がしなかったでしょう。
しかも、このヘクスを砲腔照準区域(Bore Sighted Location:事前に狙いをつけてたんですね)としてため、行き成り出てきてもDR7以下で命中です。「8以上出ねぇかなー」との淡い期待も虚しく、DRは丁度7。
クロムウェルは撃破されました。幸運だったのは、乗車兵も戦車兵も脱出に成功したこと。88が命中すると、連合軍の大概の戦車では爆発炎上してしまいます。このクロムウェルもDR7以下で爆発炎上だったのですが、出目が10だったので生き残れました。
『1ターンのイギリス軍終了時』あら、ピンボケだ。また猿遊会でみんなに言われてまう。
さて、撃破されたクロムウェルから脱出した分隊が、運河に唯一架かる橋(B)を渡らせないように前進(A)。
イギリス軍は88を恐れて建物に隠れて歩兵を降ろします(C)。村へも10-2の指揮官が1個小隊を率いて前進(D)。
本当に、イギリス軍は兵力が少ないです。WWⅠからの人的損害が回復できないのですね。
『2ターン終了時』あらら。ちょっと飛んでいますね。
イギリス軍は2輌目を失っています(A)。これはLOSの読み間違いでした。ここなら88から見えないと判断し、村の戦闘を支援するために進出させたのです。ところが、ここは88からLOSがあり。チャレンジャーが爆発炎上。普通の戦車が88LLの命中弾を喰らったらこうなるんですね。イギリス軍的には困るけど。
OBAが景気良く炸裂してますけど、戦果は上がってません(B)。地面を掘り返して弾痕をこさえただけ。
そうそう、ドイツ軍は運河の向こうへ1個分隊を渡らせています(C)。これを妨害するために進出させたイギリス軍の分隊は、88からのCH(致命的命中)で36火力の「ソーラーレイ」を喰らって蒸発してまいますた(D)。
イギリス軍は村へ取り付いたり(E)、運河沿いに前進したり(F)。走って来ると、これ位の進出速度になります。
これから本格的な戦闘になるんですね。
『3ターン終了時』またもや1輌戦車が燃えていますねー(A)。これも88からのLOSを見逃したんです。チャレンジャー君2号が爆発炎上。何やってんだか。
村で展開していたドイツ軍は、みーんなダミースタックでした(B)。バリバリ撃ったら消えちゃいますた。
他では煙幕を展開させ、ジリジリ前進してます(C)。イギリス軍は煙幕を使えるユニットが多いんです。
ここまでドイツ軍はほとんど動いていません。姿を現したのは88とLMG5-4-8のみ(D)。それでも火力が高いので、おいそれとは前進できません。
まあ、次のターンに増援が現れるので、そこから勝負です。
『4ターン終了時』ここまでの悪戦苦闘にイギリス軍はキレちゃいまして。「行ったらんかい、オラ!」状態になったんす。良い子は真似しちゃダメよ。
運河沿いはOBA待ち。ドイツ軍の高いスタックがあり(A)、これが危なくて進めません。ちなみに、この前のヘクスにあった88は「お役ゴメン」とドイツ軍が自ら破壊しました。
そのOBAはⅣ号駆逐戦車を狙って砲撃中(B)。だって、ハッチを開けていたんですもの。
ワニはスクラムを組んで、火炎放射のアメアラレ・・・。の筈が、1匹のワニは最初の火吹きでガス欠(C)。なんちゅうこった。もう1匹はDを放射。だって、ここは定石だったんですもの。でも、88がいたらその前に撃たれちゃっていましたか。そうですか。
村へと突入した10-2スタックが、Dへと射撃すると88現る。なろほど、ここにいましたか。
ヤケ1号はEで混乱している皆さん。左から入って来て、一気に突っ走るつもりが、Fでドイツ軍に撃たれまして。8-1+MMGが砲腔照準区域してましてですね。7火力マイナス4の結果は1KIA・・・(滝汗)。「お願い9-1だけは死なないでぇー」の祈りが届いて、何とか生き残りました。ちなみに、生き残った9-1は回復の6ゾロで不運。それで死んでしまいました。悪手をやると、悪い結果が付いてくるモンです。
ヤケ2号はGでBogってる戦車。ここにHIPしていたドイツ軍の2-4-8がいたんです。歩兵を戻すのも面倒なんで。ええ、オーバーランを狙ったんですよ。ところが、ガクリと止まってしまいまして。白兵戦で撃破される危険があったんですけど、何とか生き残り。お返しの射撃でピンゾロ=1KIAでした。ほー、助かったぁ。
『5ターン終了時』ここに来てゲームは大きく動き出しました。
燻り出された88は、10-2+MMG+4-5-7の射撃を喰らって操作班が混乱(A)。何の戦果を上げる前に無力化されてしまいました。88が沈黙したのを見て、クロムウェルが前進(B)。
イギリス軍に対戦車能力が低いのを見計らって、Ⅳ号駆逐戦車がクロムウェルと正面からの撃ち合いを挑んで来ました。同じヘクスなのでⅣ号駆逐戦車しか見えていませんがAに88もいます。Ⅳ号駆逐戦車へ狂ったように、MTR(迫撃砲)やPIATを撃ち込みますが命中しません。そして前進射撃により、クロムウェルが撃破されてしまいます。やれやれ。
C周辺のドイツ軍は消えています。狙撃兵が当たったり、ワニの機銃により、ダミーが露見したのです。「何だよ、ピンゾロのみのイギリス軍だけ当たって、SANが5のドイツ軍が当たらないってオカシクないかぁ?」とルセロさんはぼやきます。
Dには、やはりドイツ軍の9-2+HMG+5-4-8がいました。そのため、少々の損害が出ています。本当にOBA待ち。そのOBAは今回お休みです。
ドイツ軍は全体的に撤収を行っています。
『6ターン終了時』Ⅳ号駆逐戦車の突進を見たイギリス軍はヤケ3号発動。
ワニのハッチを開けてⅣ号駆逐戦車を丸焼きを狙いました(A)。移動力が足りなくて、道路の1/2MPを使う必要があったんです。普通はこんな危ないことしてはいけません。だって、狙撃兵が当たったり、歩兵の火力で損害が出ると面倒ですから。で、今回はⅣ号駆逐戦車からHE弾を喰らってstun(操作班の一部を失う)。ガックリだよ!
そこで鬱陶しいⅣ号駆逐戦車を撃破するため、10-2のスタックが白兵戦を挑むべく前進。Ⅳ号駆逐戦車にはsDがあるから、危ないんですけどね。
ところが、Ⅳ号駆逐戦車にPIATが命中しSHOCK。そこを10-2のスタックが突っ込んで行って撃破(B)。
運河沿いは藪睨み状態。9-2+HMG+5-4-8を煙幕で煙に巻いたんですが、白兵戦を挑むには危険過ぎです(C)。イギリス軍は村を通過中。
そこにドイツ軍のHIPが湧いてきました(D)。イギリス軍の戦車を狙ったのです。むむむ、危険が危ない。
復活したOBAは変なところで爆裂(E)。いや、狙ったのでなく、行っちゃったんですけど。
『7ターン終了時』ゲームは佳境を迎えています。
OBAのバカ当たりでドイツ軍は陣形を建て直せません(A)。ここまで1回お休みがあっただけで、ボカボカと炸裂しています。しかも序盤は効果がなかったのに、この終盤に来て大当たりしています。思わずルセロさんが「赤、入ってるのかあ!?」と疑問を呈したり。それを調べてちゃんとあれば(ちょっとドキドキしましたが)、「yagiさん、盲パイしてるだろ!」とあらぬ疑い。「ルセロさんのカードだよ!!」と逆ギレしますた。まあ、ここまでボカボカやられたら、気持ちは分かりますけどね。
stunしたワニはESBをブッコンで、ドイツ軍のキラースタックを焼き払います(B)。これじゃあ意味不明ですね。ワニは移動力が7しかないんです。それだと全然ドイツ軍に追いつかなくて、攻撃ができないんです。そこでESB(無理矢理移動力を増やす。失敗するとエンジンが焼きついて移動不能)をして強引に焼き払う位置へと進出したんです。ちなみに、ワニに乗っているのは「MA故障」。主砲が故障しているんです。これが完全に壊れると帰還となるため、そのまま車体の火炎放射器で焼きマクリです。それを知っているルセロさんは「MA直そうよー」とか「MA直せるよ?」とかチャチャを入れてました。
危険なHSには煙幕で煙に巻いて無力化(C)。どうせ、ドイツ軍はHS(2-4-8)なので2個のSQ(4-5-7)に白兵戦を仕掛けさせれば、負けることはない。ハズだったんですが、向こうは隠蔽だったため、不意打ちを取られまして。それで離脱されてDまで逃げられちゃいますた。
手堅いルセロさんはⅣ号駆逐戦車を撃破されない位置へと移動させます(E)。これで、このⅣ号駆逐戦車が撃破される可能性はありません。
『8ターンのイギリス軍終了時』さあ、最終ターンです。
ドイツ軍のキラースタックはまとめて捕虜になっています(A)。
ワニのESB突撃は続き、今度は奥の石造建物を焼き払い、そこへイギリス歩兵が突入(B)。ドイツ軍もただでは焼かれる訳にはいかず、PF(パンツァー・ファスト)の乱れ撃ち。初弾は射撃位置に付けぬままPINに。それでも無為に焼かれるよりは、と放ったPF。DR3以下命中で出た目は3!
「これは負けた」と観念していると、次の出た目は6ゾロ!!
一応、説明しておくと命中しても、効果のDRが6ゾロだと「何でも効果なし」なのです。和訳では「不発」となっていますが、実際にはどこか効果のないところ(道具箱とか消火器とか)に命中したのです。
たまにある「ピンゾロ・6ゾロ」です。しばし爆笑に包まれました。
不意打ちで逃げ回ったドイツ軍のHS(2-4-8)なのですが(C)、PFが当たりません。結局、白兵戦の餌食に。
残るイギリス軍は、ドイツ軍の反撃を阻止すべく展開しています(D)。
特に、運河の橋の手前にはSQ(4-5-7)を置いて、石造建物の奪還を阻止しています(E)。
ここでVPを計算しました。すると、ドイツ軍:76VP、イギリス軍:78VP。
僅か2VPしか差がありません。思わず何度も計算してしまいました。
配置で1時間。プレイ時間は、11時から17時までの6時間を費やして、この差です。
二人の顔に何とも言えない笑いが浮かびます。
さあ、2点を取り返すべく、ルセロさんは知恵を絞りました。
回復を行ってみたところ、動ける部隊は増えません。下手に石造建物へ突進しては、損害を増やす危険があります。そのような布陣をイギリス軍が取っていますから。
で、結論は1つ。
橋のたもとにいるイギリスSQ(4-5-7)を混乱させ、Ⅳ号駆逐戦車をその向こうへ進出。潰走不能で除去を狙うことに。
まず、準備射撃を行ったところ、全く効果は上がりません。仕方ないので、Ⅳ号駆逐戦車でオーバーランをかけることに。移動力を補うため、ハッチを全開で突進です。
イギリス軍も阻止すべく、方々から射撃を行いますが、効果がありません。
遂に、オーバーランを喰らわせますが、こちらも効果はありません。
一旦通過し、再度のオーバーランを狙い側面を曝したところに、PIATが命中。そして撃破(ルセロさん、シュルツン忘れてたね)。
この時点でゲーム終了となりました。
ドイツ軍の損害は少なかったのですが、石造建物とⅣ号駆逐戦車、それに88を取られたのが大きかったですね。イギリス軍は戦車の損害が多かったものの、歩兵のそれが少なく、石造建物を確保できたのが大きかったです。
個人的な感想としては、奮戦していた88を破壊してから、流れが変わったように思います。まあ、当てにはなりませんが。
ちなみに、ザハさんとMMさんとの対戦は、両軍ともボロボロ。
それでもドイツ軍の捕虜を沢山取ったイギリス軍の勝利でした。
詳しいAARはザハさんのブログを待ちましょう。
http://sacher505.blog25.fc2.com/
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