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2010-05-29 15:31

『不条理な物語』 1st

『不条理な物語』千葉会の日曜でASLリーグ公式戦を対戦しました。
お相手は、ASLリーグで圧倒的な勝率を誇っているルセロさん。シナリオは「大きいのがいい!」とJ24『SMASHING THE 3rd』を選びました。
では、シナリオの説明をしましょう。
1944年8月3日、ポーランドはウォロミン南部。
バグラチオン作戦でドイツ軍の戦線を奥深くまで突破したソビエト第3戦車軍団。ウォロミン南部の南部で停止することとなった。そこはワルシャワからの鉄道を封鎖する重要地点で、イタリアから転出されたヘルマン・ゲーリング師団が反撃を行うこととなった。戦車の多くを失っていた同師団は、第4装甲師団の支援を得て攻撃を決行したのである。
両軍の兵力は、攻撃側であるドイツ軍は5-4-8×5個分隊、4-6-8×5個分隊、4-6-7×5個分隊。それに指揮官が9-2、8-1、8-0×2。SW(支援火器)はHMG、MMG×2、LMG×4(MGは機関銃のことで、Hが重、Mが中、Lが軽を現している)、PSK(パンツァー・シュレッケ:ドイツ軍のバズーカ)。兵力も豊富で指揮官も支援火器も充実している。さらにⅣ号H型戦車×10、と戦車兵力がASLとしては最大規模です。泣き所はELRが2と低いこと。これにより、戦闘が経過すると、部隊の質が落ちていってしまう。
防御側のソ連軍は4-4-7×11個分隊。指揮官が9-1、8-0。HMG、MMG、LMG×2、ATR(対戦車ライフル)×3、50mmMTR(迫撃砲)。歩兵の兵力的には攻撃側:防御側で換算すると1.5:1なので、ASLのシナリオでは良くある比率。支援火器はソコソコですが、ソ連軍らしく指揮官が少ないのが泣き所。そして戦車がT34/76 M43×5が配置であり、さらに4ターンにT34/76 M41×5も増援として得られます。これにラッチュバム(76mmART)が1門HIP(初期隠匿配置:マップには置かず紙に書かれている)されている。
Ⅳ号H型とT34/76 M41は正面で撃ち合う限りでは、全くの互角。Ⅳ号H型の主砲75mmLはTK17(貫通力と言っていい)、AF(装甲圧)は砲塔で6、車体で8。T34/76 M41の主砲76mmLはTK13でAFは11。単純にTKからAFを引いた数字がDR(サイコロ二つ振り)で出れば撃破となります(正確に言えば、ちょっと違いますけど)。T34/76 M41は砲塔のAFが薄くなるけど、それでも互角と言えます。
勝利条件ですが、ドイツ軍が100VPを盤外突破させること。除去したソ連軍ユニットのVPを突破VPへ加え、マップ上の建物は1VPと計算する。
これも簡単に計算しましょう。T34/76が1輌7VP。これが10輌で70VPで、ソ連軍の歩兵は大まかに27VP。建物は23VPありますから、簡単に言えば、ソ連軍を全て撃破すれは100VPを達成する。突破の必要はなくなりますね。ドイツ軍の全てが突破すれば、ちょうど100VPくらい。でも、損害が必ず出るので、一気に突破を目指す、という訳には行きません。
今までの経験では、ソ連軍が負ける時には、マップ上にはソ連軍はいなくなります。ドイツ軍が負ける時には、ドイツ軍の戦車が無くなって攻め手を失います。
陣営は私・yagiが防御のソ連軍。ルセロさんが攻撃のドイツ軍を担当しました。
では、プレイへと移ります。
ここからはソ連軍の作戦です。
勝敗は右のマップにある村の攻防戦で決着すると読んでいます。他に守るべき地点がなかったんです。
戦線が前過ぎるとドイツ軍に飲み込まれるし、後ろ過ぎると飲み込まれることは無くなりますが、地形的に守るに適していません。
T34/76は、左からアレクサンドラ、ベラ、チュルパン、ディーナ、エカテリーナと配置しました(名前は今付ました。まあAからロシアの女性名にしました)。左のマップにアレクサンドラとベラの2輌を置いています。戦闘の焦点である左の村に兵力を集中するのは当然ですが、側面にある程度の兵力を置かない訳には行きません。
というのは、こちらをスルーされると村への攻撃正面が増えるため、簡単に包囲が形成されてしまうからです。作戦級ゲームでも言える事ですが、防御側が包囲をされることは避けなくてはなりません。退路があれば粘ることも出来ますが、それが無くなると非常に脆くなるからです。
そのため、こちらへT34/76を2輌と歩兵を少々配置し、包囲に時間をかけさせるようにしました。
ドイツ軍が本格的に攻撃をかければ、2輌のT34/76が生き残るのは難しいでしょう。Ⅳ号H型だけでなく、この頃のドイツ歩兵にはPF(パンツァー・ファスト)やATM(対戦車磁気地雷)を装備しているため、接近を許せば撃破されるのは間違いありません。
それでも、この2輌に4-4-7+ATR(対戦車ライフル)を2個分隊を派遣しているので、手間取ってくれれば、ドイツ軍の攻撃正面が狭まるため、攻防に優位を保てます。
敢えて、アレクサンドラを孤立させています。それは76mmART・フィグネリアが支援できる地点に隠れているから。
べラの建物は2階建てなので、周囲を睥睨できます。
ドイツ軍は煙幕弾を叩き込んで無力化させるのが定石です。
そこでべラはドイツ軍が前進してきたら、Aまで後退する予定です。この位置は左右を射撃できるので、ここでⅣ号H型を2輌でも喰えればいいのですが。
ドイツ軍はBの生垣を盾にすると読みました。そこでアレクサンドラとべラの砲腔照準区域(シナリオ防御側@相手がマップ上にない、ではあるヘクスに狙いを付けることができます)を生垣に沿って狙っておきました。
残る3輌は村の中央に配置しています。これは以前、ルセロさんが使った布陣と良く似ています。オリジナル性はありませんが、有効なので仕方ありません。
HMGとMMGは村の中央に布陣しています。この二つも砲腔照準区域が出来るので、正面の2階建物へと狙いをつけました。そしてC周囲の4-4-7×3個は、ドイツ軍の前進を見届けるだけで撃つつもりはありません。これらが前衛となります。そして、そのまま村へと撤収する予定です。これを置かなければ、ドイツ軍の1ターンが安全に前進できてしまえます。しかし、存在するだけで危険を避けるため、ちょっとは遅れるか、兵力を分散させるかするハズです。
そうなると、時間を稼げるか、衝撃力が削られるかが期待できます。
さて、事前の計画はこんなところ。相手がいることですし、後は出たトコ勝負です。

1ターン終了時になります。
さすがルセロさんは上手い!巧妙に前進して来ています。
このサイズでは分かり難いため、ちょっと分割して解説して行きましょう。
その前に簡単なところを。
Wire(鉄条網)やFoxhole(タコツボ)が姿を現しています。姿を現すというのはちょっと日本語的に変ですね。それは置いておいて。
WireやFoxholeはHIPを使えます。ですから、メモに記録して敵ユニットからLOSが通れば、姿を現すのです。今回はLOSが通らなくても姿を現しました。一々確認するのが面倒だったのと、ドイツ軍の攻撃方向が見えたからです。
ポイントをいくつか挙げて行きましょう。

ドイツ軍は生垣までは前進して来ませんでした。その後方でべラの配置されていた建物へ煙幕を撃ち込むように、ソ連軍から撃たれない地点で止まりました。ここは見事に読みがハズレました。
一番左翼へⅣ号H型×2と歩兵を1個小隊ほど前進させています。歩兵は建物の占領が必要なためと、煙幕で射撃能力を無力化されたT34/76へ突進し、刈り取るためです。

CXマーカーが乗っているのが、ドイツ軍のHS(半個分隊)で、それらが突っ走って来ました。これはソ連軍の射撃を誘うためで、撃たせてこちらの布陣を確認し、主力の前進を安全にするためです。ついでに言えば、Ⅳ号H型が多数あるため、前進射撃で打撃を加えるため、ソ連軍の姿を現させる目的もありました。
ソ連軍はそれには乗りません。撃ってもいいんですよ。ASLではマイナス修正が恐ろしいため、HSが削れたり、混乱して後退すれば、攻撃の手数が減るのですから。しかし、ドイツ軍の歩兵主力やⅣ号H型による、お返しが怖いので止めました。これくらいのことは、事前に考えてあるため、ドンドンと進んで行きます。
そしてドイツ軍の全体的な全体像がこちらです。
手堅く前進を行ったといっていいです。
ドイツ軍の移動中には、ソ連軍は全く射撃を行いませんでした。そのため、ゲームが始まって、ここまでで10分くらいでしょうか。慣れた二人がやれば、こんなモンです。
では、ソ連軍との関連を追って行きます。
アレクサンドラから、生垣の後方で停止したⅣ号H型へLOSがあるような気がします。そこで機関銃を撃ってみました。LOSの確認には何かが射撃する必要があります。そこで主砲を行き成り撃つのでなく、事前に機関銃でLOSを確認することがASLでは定石です。ちなみに実戦でも同じことをしています。
するとLOSはありました。ルセロさんも、ボソリと「あると思ったんだ」と呟きます。距離は11ヘクスあり、この距離ではドイツ軍の照準器が優秀なので、撃ち合っても勝てると踏んだのでした。
LOSを確認したアレクサンドラの主砲が射撃すると、初弾ピンゾロ。CH(致命的命中:一番弱いところに命中したこととなり、TKが倍になる)となりました。
思わずルセロさんは苦笑い。ええ、この辺りまでは苦笑いで済んでいました。
先頭のⅣ号H型はあっさり撃破。ルセロさんは「これに戦車指揮官が乗ってたんだ」とボヤキました。成る程。計算すると、T34/76のDRM(さいの目修正)は移動目標+2、麦畑+1、BU(ハッチ閉める)+1の合計+4DRM。基本THが8のためDR4以下でなければ、命中しません。
ところが、Ⅳ号H型の9-1の戦車指揮官が乗っていてハッチを開けていると、基本TH9に移動後射撃+4、TEM(森)+1、麦畑+1、それに戦車指揮官の-1ですから、DR4以下。
そう、全く同じ命中確率で勝負を挑めたのです。それに次の射撃からはⅣ号H型が命中する確率は高くなります。しかし、ASLの格言「ピンゾロには勝てない」。ROF(発射頻度)も残り、2輌目のⅣ号H型との撃ちあいになりました。この勝負はまだまだ付かないでしょう。
ドイツ軍は左へⅣ号H型を2輌前進させており、その目的が理解出来ませんでした。
すると、中央の森や繁みへと射撃を行います。成る程、ここにラッチェバムが隠れていると思っているのね。というより、隠れていそうなところを潰しているのね。

随分後方でⅣ号H型が止まるので不思議に思っていたら、ソ連軍のタコツボへと射撃を行います。成る程(これバッカ)、7ヘクスで止まっておけば、意図的走行不能の試みが出来ないので、Ⅳ号H型から撃ち放題となるんです。タコツボから移動するには、一旦そこから出なければならないため、大変危険です。これでソ連軍の最右翼は身動きが取れなくなりました。
・1st-中央混乱
ソ連軍の読み違いはまだ続きます。
中央で睨みを効かせて、すぐに撤収する予定の1個分隊が混乱してしまいました。
Ⅳ号H型の前進射撃で8FP(火力)×0.5(前進射撃)×0.5(隠蔽)=2FPなので何てことない、と思っていたらですね。何度も撃たれていると、当たっちゃうんですね。で、混乱してしまった、と。
おかげで、当初の予定が狂ってしまい、前衛の他の2個も残ることになってしまいました。やれやれ。

ベラの2階にいたATR4-4-7も同じように、射撃を受け続けて混乱してしまいました。
単に、ドイツ軍の隠蔽を阻むためでしたので、この混乱は弱りました。本音を言えば、これくらいのDR差は出るものです。まあ、仕方ないな、と。
全体的に言うと、戦車戦では先手を取りましたが、歩兵戦では遅れを取ってしまっています。何にせよ、「これくらいは始まったバカリ」ですむ程度です。

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